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ぐつぐつと小さな音に耳を傾ける。
ふわりと匂う柔らかな香りに目を閉じて。
音と香りに誘われて、脳裏に浮かぶ過去の日々。
全てが幸せな記憶。
長い間美しい記憶のままでいるあの人はどうしているのだろう。
もう自分のことも、父のことも、思い出す暇など無く、日々を過ごしているのか。
そうであるならば構わない。
いつかまた会えると夢がみれる。
ずっと、7年前に別れたあの日から、再び会えると信じて疑ったことはない。
根拠なんてどこにもない。
けれどもう二度と会えないという根拠もない。
姉もそう思ってくれているはずだと、信じていた。
そっと目を開くといい具合にシチューが煮詰まっている。
玄関のドアが開く音がして、ただいまと父が帰りを知らせる。
おかえりと微笑んで、鍋に蓋をする。
「お父さん、今日は久しぶりにシチューにしてみたの」
お姉ちゃん。
私もお母さんのシチュー作れるようになったよ。
「…ああ…いい匂いだ」
「ね、お父さん。早く食べよ?」
いつかまた一緒に食べようね。
それは幸せの香り
(されど今は少しの哀しみを含んで)
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